沖縄戦から73年がたっても、なお危険と隣り合わせの生活を強いられている現実が浮き彫りになった。

 米軍キャンプ・シュワブに隣接する名護市数久田の農作業小屋で窓ガラスが割れ、銃弾のような物が見つかった。

 マンゴー栽培をしている管理人の男性が買い出しのため小屋を離れていた昼間の約1時間半の間に起きた。

 一歩間違えれば男性に被害が及んでいた。

 現場には長さ約5センチ、直径1センチ強の銃弾のような物が落ちていた。

 引き戸を貫通、壁にぶつかって跳ね返り、高窓を割ったとみられる。

 専門家は今回の「流弾」を銃の操作ミスか、何かに当たって跳ね返った「跳弾」の可能性を指摘する。

 銃口を1度高く向けると、射程は100~200メートル伸びるという。

 在沖米海兵隊は「慰霊の日」を含む18~24日にシュワブで実弾訓練を実施すると関係自治体に通知していた。

 「流弾」が見つかった後、在沖米海兵隊は本紙取材に「地域社会の安全を大切にし、問題を非常に真(しん)摯(し)に受け止める」と回答した。

 予防措置として実弾射撃訓練場の「レンジ10」を一時的に閉鎖したことを明らかにした。レンジ10からの「流弾」であることが濃厚となった。

 小屋とシュワブは直線距離にして約1キロ、レンジ10とは同じく数キロ、小屋から国道58号までは約250メートルしか離れていない。近くには民間地域もあり、危険極まりない。

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 米軍が使用した銃弾かどうか、同じ時間帯に訓練していた部隊を調べればすぐ分かることである。県警は「流弾」を回収するとともに、実況見分を実施。器物損壊事件などを視野に捜査する方針だ。

 レンジ10の現場検証を速やかにするのが捜査の鉄則である。米軍は県警の基地内立ち入りを早急に認め、捜査に全面協力すべきだ。

 懸念されるのは、米軍が日米地位協定の排他的管理権を盾に県警の基地内立ち入りを拒否し捜査に支障を来しているケースが多いことだ。

 沖縄全戦没者追悼式のあいさつで安倍晋三首相は、基地負担軽減のために「できることはすべて行う」と言い、ハガティ駐日米大使にも「実態解明に向けて米側の協力も得たい」と要請したという。

 県民が安全への不安を抱いている。ならば安倍首相は県警の捜査が迅速に進むよう米軍に強く働き掛けるべきだ。

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 復帰後、流弾事故は28件に上る。名護市内では5件発生し、うち4件がレンジ10から発射されている。米軍の射撃訓練場には構造的な欠陥がある。狭い沖縄では民間地域との距離が近すぎるのである。

 2002年7月にレンジ10から名護市数久田のパイナップル畑に重機関銃弾が着弾。男性が農作業をしており、大惨事になるところだった。

 米軍は銃身を固定する「射角制御装置」設置で安全対策が取られたとして原因究明をしないまま訓練を再開した。装置が万全でないことは米軍自身が認めている。レンジ10の射撃訓練廃止を求める。