日米共同遺骨収集事業に、これだけは No という日本 - 米国側の遺骨収集事業協力の要望をかわし続ける日本政府のお粗末な言い訳
今も洞窟に散らばる戦死者の遺骨 日本は国のために死んだ人たちを放置してきた
国のために戦って亡くなった兵士の遺骨を
この国はどう扱っているのか。
事あるごとに日米同盟の素晴らしさを強調する日本政府だが、なんと!
日米共同で戦没者の遺骨収集事業を進めていこうと呼びかる米国に対し、なんと日本政府は、
「旧敵国」との共同調査は遺族側の感情を害しかねない
という理由をつけて、要請をかわしつづけている。
しかし、産経新聞の報道によると、遺族側は、難色を示す日本政府とはうらはらに、日米共同で調査を進めて遺骨収集をして欲しいと願っている。
遺族側としては、それが当然の「感情」だ。
戦没者遺骨収集で日米に齟齬 共同現地調査の米提案に厚労省は消極的
2018.7.29 22:49
終戦から今年で73年となる中、戦没者の遺骨収集をめぐり日米間で協力態勢に齟齬(そご)が生じている。米側は現地での収集、調査を共同で行う覚書の締結を度々要請するのに対し、日本側はかわし続けているのだ。
厚生労働省は遺族の感情に配慮していると強調するが、日本遺族会は逆に「やってほしい」として、同省の姿勢に疑問の目を向ける。(坂井広志)
7月10日、千鳥ケ淵戦没者墓苑(東京都千代田区)に1人の米国防総省幹部が献花に訪れ、戦没者に哀悼の意を示した。捕虜・行方不明者調査局(DPAA)のマッキーグ局長だ。その後、挨拶で遺骨収集について「私たちは協力と協働の力を強化し、研究、分析、調査をしなければならない」と訴えた。
マッキーグ氏は、9日には厚労省で橋本泰宏審議官と向き合いこう迫った。「日米共同で現場に行って遺骨の収集、鑑定をするよう覚書を締結したい」
橋本氏は「これから考えたい」と答えた。
先の大戦で沖縄や、東京都小笠原村硫黄島、さらに外地で命を落とした日本の戦没者の遺骨は約240万人に上る。収容されたのは6月末現在で約128万人。いまだ約112万人の遺骨が残されている。
日米で死闘を繰り広げた南太平洋諸島をはじめとする南方地域には米兵の遺骨も残されている。
日本側はこれまでの遺骨収集で、米兵とみられるものは現場に残し、米側に連絡してきた。細かすぎて身元が判別できない遺骨については現地で焼却した上で日本に持ち帰り、千鳥ケ淵に埋葬している。
問題は、焼却した遺骨はDNA鑑定ができなくなることだ。身元不明人の識別を行う法医人類学者は米側が充実しているとされる。実際、遺骨収集事業の関係者は「米側は細かい骨も含めて自国へ持ち帰り詳細に鑑定するので、兵士個々のデータ管理も充実している。米側のゴールは遺族に遺骨を戻すことにあり、日本とは考え方に温度差がある」と語る。
日本側もDNA鑑定を平成15年度から行っている。ただ、遺留品などの手掛かりがあったり、身元をあらかじめ推定できたりするケースに限定している。米側が共同調査にこだわるのは、こうした背景がある。
産経新聞が入手した厚労省作成の内部文書によると、米側は近年、日本側が収容した遺骨に米兵が混ざっている可能性があるとして、現場での焼却に懸念を表明したこともある。
日本側が鑑定に条件を設けていることに、それなりの理由はある。シベリア抑留中の死者は多くが鑑定条件を満たしているが、南方は戦闘地であったことや高温多湿で遺骨の保存状況が悪い。DNA鑑定の対象を拡大しても血縁関係を決定することは困難だという。
鑑定技術が日本より勝る米側の協力は不可欠とみられる。それでも、厚労省の担当者は「旧敵国」との共同調査は遺族側の感情を害しかねないと慎重だ。
これに対し、父親がミャンマーで戦死した日本遺族会副会長で山口県遺族連盟会長の市来(いちき)健之助さん(81)は「日米共同で調査することに感情的なものはない。米側が共同でやりたいというなら、それに乗っかったらよい」と述べる。
政府は28~36年度を遺骨収集の集中実施期間と定めていることについても、市来さんは「遅きに失した感がある」と語る。
マッキーグ氏は取材に対し「厚労省は『政府間の決め事なので外務省にも相談する』と話すが、外務省が関係しなければならない国際的な法的基準を作るわけではない。今後、覚書の下書きを提出させてもらう」と語った。
日米同盟を重視する産経新聞だからこそ、日本政府の態度に不満なのだろう。
米国産兵器をどんどんとつりあげてくるのも言いなりの、隷属的な地位協定すらろくに交渉できない、米国に No といえない日本政府が、
珍しく、共同遺骨収集事業に関しては拒絶する。つまり日本政府は亡くなった日本兵士の遺骨収集にはほとんど興味はないのだ。
そのあまりに冷淡な態度に、米国側は、「考え方に温度差がある」と語る。
日本政府の戦没者に関する考え方とは、つまり、この国が送りだし遠い地で亡くなった夥しい兵士たち、人間一人ひとりには関心はない。彼らは「柱」と呼ばれ、靖国の「英霊」として祀っているのから、故人を遺族に返すという遺骨収集にはほとんど関心がないということだ。これが「靖国」という思考である。
ちなみに、遠い地で亡くなった無名兵士たちの遺骨は、靖国という宗教施設にではなく、千鳥ケ淵戦没者墓苑にある。
沖縄の各地には、いまだに多くの戦没者の遺骨が埋もれている。
遺族側が「国の責任で遺骨を収集してくれ、DNA検査をして個人の特定を進めてくれ」と、日本政府に何度も要請してきたが、しかし、いつも消極的な態度であった。
今回の米国政府からの申し出を機に、沖縄を含めた各戦地における遺骨調査が進むことを切に願う。
さて、遺骨調査に消極的な日本政府の防衛大臣を表敬訪問した米インド太平洋軍司令官は、北朝鮮が朝鮮戦争で戦死した米兵の遺骨を返還したことに触れ、『大変ポジティブなこと』と、評価したという。
また、トランプ大統領は、国として遺骨返還を早急に要求し、そして遺骨が返還されたとき、ありがとう、とツイートした。
米国と休戦状態にある北朝鮮でさえ、強く「敵国」に戦没者の遺骨返還をし、それが実現したとき「敵国」は「ありがとう」とツイートした。
一方で、日本は米国の同盟国と強く主張し、税金で米軍を強く「思いやり」する日本は、『「旧敵国」との共同調査は遺族側の感情を害しかねない』というお粗末なへ理屈で、同盟国との共同調査に消極的だというから、
なんのブラック・ジョークなのかと思う。
「遺族側の感情を害しかねない」という理屈が通るとしたら、73年以上もの間、「旧敵国」の軍人たちと隣り合わせで暮らすことを余儀なくされてきた沖縄県民の「感情」を、いったい日本政府はどう受け止めているのだろうか。