【保存版】MX『ニュース女子』を独自調査したBPO 意見書を全文掲載 - 「重大な放送倫理違反」と厳しく批判、「砦は崩れた」

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ニュース女子な自称ジャーナリストの面々。

 

2017年12月14日

TOKYO MXが今年の1月に放送した「ニュース女子」沖縄特集について、BPO (放送倫理・番組向上機構) は「重大な放送倫理違反があった」とする意見書を発表した。 

 

ここまで来るのに一年かかった。

 

しかし、BPO は独自の調査を重ね、その報告書は、ついにこれが悪質なデマとヘイトの番組であったという明確な答えを導きだした。

 

不安クラブでは、第27号委員会決定の全文をここに紹介し、検証したい。

 

特に IV の委員会の独自検証は必読である。

 

IV-2 ⇨ (医療ヘリデマだけではない) 依田氏の「救急車デマ」。国頭地区行政事務組合消防本部消防長に確認、綿密な検証のうえ、完膚なきまでに否定されている。

 

IV-3 ⇨ またお笑いなのは、手登根の後生大事な茶封筒は、フェンスクリーンのメンバーが「拾った」と。更に手登根自身が「自分は反対派が手当をもらっていると言ったことはない」と自分のデマを自ら否定するありさま。

カッコ悪すぎ !

 

IV-4 ⇨ 反対派から「おまえ誰や」「何しに来た」と罵声を浴びせられたとの制作会社の回答、取材VTRで井上和彦を「反対派にとって有名人」と伝えたスーパーにもかかわらず、現場の三人は、井上氏は沖縄では有名ではなく、自分たちも井上氏のことを知らず、近づいてきたことも知らなかったと。

 

また手登根自身も、委員会の聴き取りに対し、井上氏は沖縄の人にそこまでは知られていないと回答している、という大爆笑 !

 

まさにお笑いニュース女子 !

 

 

 

2017年1月2日のニュース女子、DHC 化粧品の CM が入る。

youtu.be

 

第27号 | BPO | 放送倫理・番組向上機構

東京メトロポリタンテレビジョンニュース女子

沖縄基地問題の特集に関する意見

放送倫理検証委員会 

放送倫理・番組向上機構BPO

 

Ⅰ はじめに

「物知りな男はカッコいい!ここは、ニュースを良く知る男性とニュースをもっと良く知りたい女性が集う、大人の社交場。みんなが知っているニュースを、みんなが知らないところまで、深~くえぐっておしゃべりします!!」

 

東京メトロポリタンテレビジョン(以下「TOKYO MX」という)が自社のホームページに載せている『ニュース女子』の番組紹介文である。タイトルに「ニュース」ということばを含むが、ホームページでは「バラエティ・情報」のジャンルに位置づけている。タイトルでは「女子」を前面に出しながらも、「物知りな男はカッコいい!」といううたい文句からすれば、女性は引き立て役であろうか。実際の番組でも、男性が多くを占めるコメンテーターたちが、時事問題をテーマに刺激的なスタジオトークを展開している。⇨ セクシスト番組

 

2017年1月2日、この『ニュース女子』で、「沖縄緊急調査 マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄県の米軍北部訓練場内で進められた東村高江地区のヘリパッド(ヘリコプター離着陸帯)の建設に反対して抗議活動に参加する人々について、日当を得て活動している疑いがある、現場に出動した救急車を止めたなどと報じ、それを前提にコメンテーターたちが批判的な感想を述べ論評する番組を放送した。

 

この番組に対して、放送直後から、事実に基づかない報道や論評である、批判対象である抗議活動側への取材を怠っている、差別的表現が含まれている、ネット上のデマがそのまま地上波に持ち込まれた、などといった批判がなされた。また、BPOにも多数の視聴者意見が寄せられた。

 

ニュース女子』は、TOKYO MXが放送しているが、制作しているのはTOKYO MXではない。この番組は、スポンサーが制作費を拠出して制作会社が番組制作を行い、放送局は、スポンサーから電波料の支払いを受け、納品された完成品(以下「完パケ」という)を放送するいわゆる“持ち込み番組”である。“持ち込み番組” では、放送局は番組の制作過程にほとんどかかわらない。

 

しかし、電波法上の免許を得て公共の電波を使用しているのが放送局である以上、放送した番組についての責任は放送局にある。放送局は、放送法に従って番組基準を自主的に制定し、放送内容の制作・編集の基準を表明しており、この番組基準の中核は放送倫理の遵守である。民間放送の場合、日本民間放送連盟(以下「民放連」という)放送基準が準用されるのが通例で、TOKYO MXも例外ではない。従って、自社制作であれ、外部委託制作であれ、“持ち込み番組”であれ、自ら放送倫理の遵守を誓っている以上、放送される番組の内容は放送倫理に適ったものでなければならない。放送局は、放送倫理に反する番組を放送しないよう、最大限の注意を払う責任を負っているのである。

 

この責任を果たすために、各放送局は、「考査」という手続きを設けている。放送局が制作にかかわっている番組の場合は、制作の過程においてプロデューサーやディレクターなどが番組内容の適正さをチェックするが、“持ち込み番組”の場合、放送局は番組の制作過程にほとんどかかわらないため、納品された番組に対する考査こそが、放送局がその放送責任を果たすために最も重要な手続きとなる。考査が適正に行われず、放送倫理上の問題点が見逃されたまま放送された場合、当該放送局には放送倫理違反があることになる。考査は、とりわけ“持ち込み番組”では、放送局が放送倫理を遵守するうえでの“最後の砦”となるのである。

 

BPO放送倫理検証委員会(以下「委員会」という)は、放送された番組について放送倫理上の問題があれば審議や審理をして意見や見解などを公表することをその任務とするが、委員会が意見などを述べるのは放送局に対してであるから、“持ち込み番組”の放送の場合、委員会の検証の対象は、当該番組に対して放送局による適正な考査が行われたのかどうかということになる。もっとも、当該番組に放送倫理上の問題が何もない場合には、考査が適正であったかどうかを検証する必要は生じない。そこで、考査の適正さを検証する前提として、当該番組の放送倫理上の問題点の有無についても検討しなければならない。

 

委員会は、TOKYO MXから当該番組について報告を受けたが、その結論は、「取材に基づいて制作、放送された内容は、放送法、放送基準に準じたものであり妥当と考えております」というものであった。 ⇨ 自覚も反省もない Tokyo MX

 

委員会で当該番組を視聴したところ、放送内容の主要な部分についてその根拠が番組上明らかとは言えないなどの意見が出された。そのため委員会は、TOKYO MXが番組内容を適切に考査したのかどうかを審議することとし、その前提として、果たしてこの番組に放送倫理上の問題があったのかどうかを、必要な範囲で検討することとした。

 

本件は、委員会が、“持ち込み番組”に対する放送局の考査が適正であったかどうかを検証する初めての事案である。

 

Ⅱ 審議の対象とした番組

1 『ニュース女子』について

委員会が審議の対象としたのは、TOKYO MXが、2017年1月2日の午後10時から放送した『ニュース女子』沖縄基地問題の特集(以下「本件放送」という)である。『ニュース女子』は、2015年4月1日からCSチャンネルで放送を開始した。TOKYO MXでの放送の開始は、2015年10月7日からである。スポンサーの化粧品会社 (註・株式会社 DHC ) がTOKYO MXの番組枠を買い取り、化粧品会社の子会社である制作会社が制作し、納品している。TOKYO MXを除く地上波での放送実績は、制作会社によれば、2017年5月30日現在、レギュラー編成されていない放送局を含めて27社とのことである。

 

TOKYO MXによれば、『ニュース女子』は、女性のための「ニュース&時事問題トーク番組」として企画された。これまで放送された番組はスタジオでのトークが中心で、本件放送のように番組で現地取材を行い、その取材映像をもとにトークが行われるのは、放送開始以来、今回が2回目とのことである。

 

2 本件放送の取材VTRの内容

本件放送の流れをみていきたい。CMを含め約19分間の沖縄特集は、取材VTRとその取材VTRをめぐるスタジオトークからなる。

 

冒頭、男性司会者 (註・長谷川幸洋論説委員) が「今回取り上げるのは沖縄米軍ヘリパッドの建設問題でございます」と述べ、女性司会者が「昨年11月ごろの機動隊員の土人発言報道以降、ニュースがちょっとパッタリ途絶えてしまったんですけれども」と応じる。それを受けて男性司会者が「そこで、今ヘリパッド問題、一体現場では何が起きているのか、軍事ジャーナリスト、というよりかは軍事漫談家、Aさんが沖縄に行って取材してきてくれました」と、スタジオの笑いとともに述べたあと、取材VTRが始まる。

 

(註・これもデマ。まったく有名ではない井上和彦)

 

取材VTRは、「12月某日」、那覇市内のシーサー像前でA氏が「めんそーれー」と両手を広げてあいさつするシーンから始まる。スタジオの女性タレントからは「いいなあ。行きたい」との笑い声が上がる。A氏 (註・井上和彦) は「実はですね、今大変話題になっています高江ヘリパッドの建設現場で、過激な反対運動が行われているということで、ちょっとこの現場ですね、どのようになっているのか、取材をするためにやってまいりました。それでは行ってまいります」と述べ、画面から消える。画面には、「A(氏)沖縄緊急調査 マスコミが報道しない真実」とのスーパーが、ナレーションの音声とともに表示される。

 

そのあと、映像は「いきなりデモ発見」とのナレーションとともに、街頭で抗議活動に参加する人々を映し出す。映像の現場は、A氏が先にシーサー像前で「それでは行ってまいります」と言った高江ヘリパッド建設現場ではなく、名護市内にある名護警察署前であるが、場所は明示されていない。A氏は、「いました、いました、いました、いました。反対運動の連中がですね、カメラを向けているとですね、もうアイツ、アイツだみたいな感じで、ちょっとね、こっちの方を見ています」と述べる。そして、

 

「このへんの運動家の人たちが襲撃をしに来るということを言っているんですよね」と言いながら、抗議活動に参加する人々の方に近づいて行く。画面には、「Aさんは反対派にとって有名人」とのスーパーが表示される。「Aさん、このまま突っ込んで襲撃されないですか?」とのナレーションのあと、「近く行く?」「これ近づいたら危ない危ない」とのスタッフの声が入る。続いて黒い画面に「取材交渉」というスーパーが表示され、「Aさん自ら取材交渉へ」とのナレーションが入るが、すかさず「しかし、このままだと危険と判断し、一旦撤収」とのナレーションが流れる。スタジオは爆笑に包まれ、男性司会者も「なーんだ、情けないじゃん」と述べる。A氏は「もう近づくとね、1人、2人と立ち上がって、そして、こうなんかね、敵意をむき出しにしてきてかなり緊迫した感じになりますんでね、ちょっとこのあたりで、やめておきます」と語る。

 

次に、ナレーションは「元祖反対派が集まる普天間基地へ向かった」と述べ、米軍普天間基地前からリポートするA氏を映す。現場には抗議活動をする人々の姿はない。

 

A氏が「普段ならばひどい状況になって」と述べると、「基地の外の反対派によるフェンスへの抗議活動」「車道を横断し罵声を浴びせる活動家」というスーパーとともに、別の時期に自動車内から撮影されたと思われる抗議活動の映像が流れる。A氏は「ちょっとどうなっているのかなと思って、いろいろと地元の人に聞いてみると、何とですね、ここで反対運動をやっている人たち、土日お休みのようなんですよ。週休2日のようですね」と述べ、そこに「基地の外の反対運動の人達は土日休み」「週休2日」というスーパーが入る。スタジオはまたも爆笑に包まれ、「いいなあ」との男性出演者の声も入る。

 

それに続けて、早朝に普天間基地ゲート前で抗議活動に参加する人々がノボリや横断幕を設置している映像とともに、「ちなみに、次の朝ちゃんと出勤していた反対派の皆さん、お疲れさまです」とのナレーションが流れ、「翌朝AM6:12 きちんと月曜から出勤の基地の外の反対運動する活動家の皆さん」とのスーパーが表示される。また、取材当日に普天間基地前に抗議活動をする人がいないもう一つの理由として、A氏は「このへんの反対運動の人たちがどうやら高江のヘリパッド建設地のほうに集中投入されているということで」と説明する。そこに、「基地の外の反対運動の活動家達が高江ヘリパッド移設反対デモに集中投入!?」とのスーパーが重なり、続けて「とにかく反対派の人たちは高江に集結し、緊迫した状態に」とのナレーションが入る。なお、スーパーで合計4回にわたり繰り返される「基地の外の」という形容は、「基地の外」の部分だけ黄色の斜体の文字で示される。

 

その後、名護市内の米軍キャンプ・シュワブのゲート前付近で走行中の車窓から抗議活動のテントを見たA氏が「うわー」「みんな定年を過ぎたような人たちばっかりでしたよ」とコメントする。スタジオの男性司会者が笑う映像が重ねられる。そこに「過激派デモの武闘派集団『シルバー部隊』 逮捕されても生活の影響もない65歳~75歳を集めた集団」とのスーパーが、機動隊員の前に座り込む人々の写真(顔はボカシをかけた映像加工がされており、年齢層は判別できない)などとともに放送される。さらに、「万一逮捕されても生活に影響の少ない65歳以上のお年寄りを集め、過激デモ活動に従事させているという」とのナレーションが流れる。

 

VTRは、「次々に高江に向かう機動隊」「我々の気分も盛り上がってきたのだが」とのナレーションとともに、「いざ!高江へ!!」のスーパーと、移動中の自動車内のA氏の映像を映し出す。

 

しかしながら、次の映像は高江ではなく、高江まで約40km、自動車で1時間程度の距離がある名護市内の二見杉田トンネルの入口からのA氏のリポートとなる。A氏は「このトンネルをくぐっていきますと、米軍基地の高江ヘリパッドの建設現場ということになります。実はここへ来る前に方々からですね、今ここはちょっと我慢して欲しいと」と述べる。続いて、「高江に向かっているロケの途中、地元関係者から高江ヘリパッド建設現場が緊迫してトラブルに巻き込む可能性があるので、今回の撮影を中止すべきだとの要請があり、残念だがAさんにはロケを断念してもらうことに」とのナレーションが入る。A氏は、「このトンネルの手前で、私ははるばる羽田から飛んできたんですけど、足止めを食っているという状況なんですよ」とリポートする。ナレーションは、「反対派の暴力行為により、地元の住民でさえ高江に近寄れない状況」だと述べる。

 

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(註・依田氏の発言がことごとくデマであることは IV で検証されている。) 

 

続いて地元住民のB氏 (註・依田啓示) がA氏のインタビューに答え、2016年12月の米軍北部訓練場の一部返還が迫る中で、「抗議団体がもう今命がけで止めたろうということで、先鋭化しちゃっている」「僕ら村民の、日々の生活がですね、一切もう止まってしまうくらいですね、その公道にどんどん車を違法に駐車して、何十台も重ねて。対向車線に止めたりとかですね。つまり普通に自分の畑に行きたいという人が通れない」と言う。A氏が「救急車も止めたとかいう話もあるんですか」と質問すると、B氏は「それはあります」「防衛局、機動隊の人が暴力をふるわれているので、その救急車を止めて、現場に急行できない事態が、しばらく、ずーっと続いていたんです」と述べる。A氏が「テロリストみたいじゃないですか」と言うと、B氏は「僕はテロリストと言っても全然大げさじゃないと思います」と応じる。

 

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(註・茶封筒の手登根デマ、自らがそれを後に認めている 爆)

 

次にVTRは、抗議活動に参加する人々が「なぜ、あと先考えず犯罪行為を繰り返すのか?その裏には信じられないカラクリがあった」として、その事実を知る人に会うために辺野古に向かったという。登場したラジオDJのC氏 (註・手登根安則) に対し、A氏は「今日Cさんからね、驚くべきものを持ってきていただいたんです」と述べる。C氏はまず東京で配られていたという「ホットケナイ、高江。ないちゃ~大・作・戦会議!」「特派員を派遣しよう!」「往復の飛行機代相当、5万円を支援します」などと書かれたチラシを見せる。そのチラシを見てインタビューするA氏が、「たしか韓国の方ですよね」などと述べたあと、「いやビックリしたのが、5万円あげますって書いてある」と声のトーンを高めて言うと、C氏が「あとは自力でがんばってくださいって」と応じ、ナレーションも「一体、何をがんばれというのだろうか」と続ける。

 

さらにC氏は、「光広 2万」、「大城様 3/22~28日まで」との記載のある茶封筒2枚のカラーコピーを示しながら、「普天間基地の周辺で見つかった茶封筒なんですよね。『光広』という名前と2万円という金額が書かれています。両方とも同じ材質で、同じ場所で見つかっています」と述べる。この茶封筒の映像と重ねて、画面には「反対派は日当を貰ってる!?」とのスーパーが表示され、スタジオの女性タレントが「仕事だあ」とつぶやく映像が重ねられる。フェンス越しに「バカヤロー」と叫ぶ人の映像(顔はボカシをかけた映像加工がされている)とともに、「これが事実なら、反対派デモの人たちは何らかの組織に雇われているのか?」とのナレーションが続く。

 

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続いてVTRは、「さらに我々の知らない沖縄の情報を教えてくれるこの女性に話を聞いた」として、キャスターのD氏にインタビューする。D氏 (註・我那覇真子) は、抗議活動を行う韓国の男性が捜査機関に身柄拘束された際に妻に書いた手紙が、地元紙で美談に仕立てられていると述べ、また、抗議活動が地元の住民に迷惑をかけているのに警察が取り締まらない理由として、県警のトップが基地建設に反対している知事だからだと解説する。最後にVTRは、A氏とD氏が海に向かって「沖縄を返せー」と叫ぶ映像で終わる。

 

3 スタジオトークの内容

次に、取材VTRを受けて出演者のスタジオトークが展開される。基本的には、スタジオゲストの女性タレントたちが問いかけ、沖縄で取材したA氏をはじめ男性コメンテーターが答える形で進行していく(以下出演者多数のため、男性司会者とA氏以外は発言者個別の記述を略す)。

 

まず「マスコミの報道しない自由のせいで隠された真実を教えてください」とのスーパーとナレーションのあと、トークが始まる。一番目のゲスト女性が、ロケに同行したスタッフが反対派に拘束されそうになったと聞いたと質問すると、A氏は、ディレクターが「こそっと一人で行ってカメラを取り上げて持ち出そうとしたら、ウワッと車が挟み撃ちかけて来たんで、彼はとっさに逃げた」と答える。反対派の行動をなぜメディアは報じないのかとの二番目のゲスト女性の質問に対して、A氏はメディアが反対派を好意的に扱うので、「我々がカメラを向けると入れない」「他のメディアもそうです」「だからおっしゃるとおり映像が出ないんです」と説明する。

 

また、二番目のゲスト女性が、反対派の「ボスは日本の方ではないってことですか」と質問したのに対し、A氏は「もう、わかんないんですよ。とにかく韓国人はいるは、中国人はいるは、という状況なんで。だから、なんでこんな奴らが反対運動やってるんだってことで、地元の人は怒り心頭になっているっていうのを聞きましたけど」と答える。

 

三番目のゲスト女性が、沖縄に住んでいる大多数の意見はどういうところにあるのかと質問すると、A氏は「大多数の人は、別にそんなねえ。米軍基地の反対とかいう声聞かないですよ」と答える。四番目のゲスト女性は、機動隊や警察の取り締まりがなぜ消極的なのかとたずねる。A氏は、行政トップの知事が基地建設に反対していること、沖縄の機動隊員は顔写真をばらまかれたり、家族にまでいやがらせをするぞと脅されたりして精神的に参ると説明する。さらに、別の男性コメンテーターが「沖縄に昔かかわっていた経験から、実は沖縄の人、みんなアメリカが好きなんですよ、多くの人は。たぶんここまで明確な体を張った過激な反対をするとはとても思えない」と発言する。

 

また、人権団体の共同代表の実名を挙げて「何者?」とのスーパーが表示される中で、男性コメンテーターは、「この方々っていうのはもともとは反原発、それに続いて反ヘイトスピーチ、そして職業的にずっとやってきて、今沖縄に行っている」と説明する。別の男性コメンテーターも、「スキマ産業ですね。何でもいいんです。盛り上がれば」と応じる。

 

さらに、男性司会者が「ちょっと聞きたいのはお金ですよ。5万円日当、お金出すなんて」「これ誰が出してるの?」と疑問を投げかける。「反対運動の日当は誰が出している?」とのスーパーが表示される中で、A氏は「本当にわからないんですよ。(中略)東京からそういう反対派の人たち、さあ一緒にみんなおいで、5万円あげるからと」と答える。別の男性コメンテーターは、「反対運動の日当は誰が出している?」とのスーパーが表示され続けている中で、人権団体の共同代表が「在日韓国朝鮮人の、差別っていうことに関して闘ってきた中ではカリスマなんですよ。もうピカイチなんですよ。お金がガンガンガンガン集まってくるという情報があるんですね」と説明する。

 

スタジオトークの最後にA氏が、高江に取材に行けなかったのは、自分たちが行くことによって「被害者になっても、そこで捜査のために、トラックが動けない状況になってしまう」と、取材断念の理由を説明して沖縄基地問題の特集が終わる。

 

Ⅲ 番組制作の経緯と放送局の考査

委員会の役割は、本件放送をTOKYO MXが放送するにあたり、考査が適正に行われたかどうかを検証することである。そこで委員会は、TOKYO MXから提出された報告書を検討したうえで、考査担当者2人、営業担当者1人、編成担当者2人、計5人に対し、8時間にわたる聴き取り調査を実施した。そのうえで、考査の適正さを検証する前提として、本件放送の制作過程を調査する必要があると考え、番組を制作した制作会社に対して、TOKYO MXを通じて対面での聴き取り調査への協力を要請したが実現しなかった。そこで、次善の方法として、書面で質問を行い、

 

制作会社からの書面による回答をTOKYO MX経由で得る方法で調査を行った。

 

1 沖縄取材の経緯

本件放送の沖縄取材は、2016年12月3日(土)から5日(月)にかけて行われた。12月3日の午後0時30分頃に那覇市内の飲食店でA氏とディレクターが打ち合わせを行った。この打ち合わせには、VTRに登場する地元住民のB氏、ラジオDJのC氏、キャスターのD氏も合流し、以後3氏は同日の取材に同行した。

 

打ち合わせのあと現地取材に向かい、午後2時頃、名護市にある米軍キャンプ・シュワブの反対派拠点のブルーシートで作ったテントを車窓から撮影。次に午後2時30分頃、同じく名護市の二見杉田トンネルの辺野古側入口前でA氏のコメント撮りを行い、その付近でB氏へのインタビューを撮影した。制作会社の回答によれば、取材に同行したB氏、C氏、D氏やタクシー運転手から「高江のデモは過激化している」「A氏は反対派に知られているから絶対危険」、反対派が「何をしてくるかわからない」などと、当日の高江での取材は危険だとアドバイスされたとのことである。制作会社の回答によると、そのほかにもA氏やC氏が知る公務員や警察関係者から、何があっても対応できないと言われていたそうである。以上のことから、ディレクターがロケ中止の判断をしたという。

 

その後再びキャンプ・シュワブの反対派拠点のテントの撮影を行った。次に午後4時頃に名護市辺野古にある高台の公園でC氏にインタビュー。さらに午後5時頃、名護警察署の裏手にある名護湾を背景にD氏のインタビューを撮影した。

 

制作会社の回答によれば、午後5時30分頃、名護警察署前で反対派の抗議活動の状況(VTR冒頭の「いきなりデモ発見」の場面)を撮影した。名護警察署前の反対派の撮影は、移動中に偶然遭遇したために行ったもので、予定したものではなかったとのことである。また、抗議活動に参加している人々に対して直接、話を聞くなどの取材は行わなかった。その理由は、その場にいた人たちから「おまえ誰や」「何しに来た」といった罵声を浴びたため、ディレクターが危険と判断したからだという。危険と感じた場面の撮影はしていないとのことである。

 

取材2日目の12月4日は、午前8時30分頃に那覇市牧志駅前のシーサー像の前で、A氏が取材の目的を語るVTRのオープニング場面の撮影をした。次に10時頃、宜野湾市の嘉数高台公園で米軍普天間基地を、10時30分頃、普天間基地野(の)嵩(だけ)ゲート前でA氏のリポートを撮影した。那覇市内で昼食をとったあと、午後2時頃にA氏は帰京した。その後3時頃、ディレクターが名護市辺野古でインサート映像の撮影を行った。

 

制作会社によれば、その後午後5時頃、ディレクターとAD(アシスタントディレクター)が、ヘリパッド建設現場に近接する高江共同組合周辺に赴いたとのことである。スタジオトークで述べられた、ディレクターが「こそっと一人で行ってカメラを取り上げて持ち出そうとしたら、ウワッと車が挟み撃ちかけて来たんで、彼はとっさに逃げた」という件は、この際に発生したという。

 

3日目の12月5日早朝には、制作スタッフが普天間基地ゲート前の抗議活動の映像を撮影した。

 

2 TOKYO MXの考査体制

当時、TOKYO MXは『ニュース女子』の考査を、編成部の考査担当部長と考査担当者の2人で行っていた。通常、考査用DVDはTOKYO MXの営業担当者を通じてスタジオ収録翌日に手渡しされる。考査用DVDは放送1回分90分程度の長さで、スタジオ収録部分にスーパーは入っていない。考査用DVDは隔週で一度に2、3本届けられ、考査担当2人で個々に視聴して判断する。さらに編成部長に考査判断を報告するようになっている。

 

編成担当者によれば、TOKYO MXが『ニュース女子』の放送を開始する際、制作会社との間で、すべての編集が終わった完パケではなくスタジオ収録部分はラッシュ(仮編集された映像)のままで考査すること、その結果、削除してほしい発言などがあれば指摘に従って制作会社側で対応することを口頭で約束していたとのことである。番組内容の修正を求める場合、考査担当2人の考査判断をまとめたものを営業担当者にメールで連絡し、営業担当者から制作会社にその内容を伝えるという形をとっている。

 

3 本件放送の考査内容

本件放送の取材VTRの編集は、スーパー入れも含め制作会社のディレクターが12月13日に行い、翌14日に音入れ作業が行われた。さらに翌15日にスタジオ収録があった。16日にTOKYO MXの考査が行われ、19日と20日に最終的な編集、21日に音入れ作業が行われた。12月26日に完パケをTOKYO MXに納品、2017年1月2日に放送された。

 

本件放送回の考査用DVDは、取材VTR部分にはスーパーがついた状態、スタジオ収録部分にはスーパーのない状態でTOKYO MXに渡された。考査の結果、意見をつけた箇所はなかったとのことであった。

考査担当部長は、沖縄に住む3人にインタビューをしており、よく取材したなとの感想を持った。A氏が沖縄に行ったことが、内容の裏付けとなっていると考えた。また、『ニュース女子』は一話完結とみておらず、沖縄基地問題は以前にも取り上げており今回は取材に基づく見解を紹介したのだと思った。抗議活動を行う反対派の取り上げ方には、問題は感じなかったという。

 

また考査担当部長は、名護警察署前の反対派に対する取材を断念したとの内容、二見杉田トンネル前で高江の現場取材を断念したとの内容についても、危険と判断して安全を図ったのだろうと考え不思議に思わなかった。

 

反対派が救急車を止めたと伝えたこと、人権団体のチラシや茶封筒を示して反対派が日当をもらっているかのように主張したことなどについても、現地取材に基づいたことだと考えて疑いを持たなかった。また、番組では可能性があるという表現にとどめ断定してはいないので問題はない、と考えたという。

 

もう一人の考査担当者は、二見杉田トンネル前で高江の現場取材を断念したとの内容については、報道番組であれば十分とは言えないが、バラエティー番組なので演出の範囲内と思い、意見はつけなかった。また、「シルバー部隊」という表現についても、インターネットで調べて反対派に高齢者が多いとの情報が出てきたので考査を通したという。

 

この考査担当者は、救急車を止めたという内容も、地元の住民であるB氏の体験談であることと、インターネットで調べたところ救急車を止めたとの情報があったことから容認したという。反対派の人たちは日当をもらい何らかの組織に雇われているのかと伝えたことについても、スーパーに「?」マークが入っていて断定していないことや、VTRで示された茶封筒は現地の人が見つけてきたものであることから容認したとしている。

考査を担当した2人とも、本件放送の完パケを放送前に視聴していなかった。

 

Ⅳ 委員会の調査

1 委員会が独自に調査した理由

本件放送の取材VTRの冒頭、A氏は、「実はですね、今大変な話題になっています高江ヘリパッドの建設現場で、過激な反対運動が行われているということで、ちょっとこの現場がですね、どのようになっているのか、取材をするためにやってまいりました」と取材の目的を語っている。

 

そして、その「過激な反対運動」の実例として、本件放送は、反対運動の参加者が救急車の出動を妨害していること、取材者が襲撃の危険を感じるほど参加者が攻撃的であったことを取り上げ、さらに反対運動の参加者が日当をもらって活動しているかのように報じている。これらの根拠とされたのは、 地元住民B氏 (依田啓示) の「防衛局、機動隊の人が暴力をふるわれているので、その救急車を止めて、現場に急行できない事態が、しばらく、ずーっと続いていたんです」とのインタビュー内容、 取材VTR冒頭の「いきなりデモ発見」の現場において危険性を理由に取材を断念したとのA氏 (井上和彦) のリポート、 ラジオDJのC氏 (手登根安則) が持参した人権団体のチラシと茶封筒のカラーコピーである。その結果、本件放送は、沖縄の基地問題について十分な知識を持たない視聴者が見ると、“抗議活動に参加する人々は、反社会的な行動に出ることがある。これらの人々は誰かが出す日当をもらって活動している疑いがある”という印象が残るものとなっている。

 

委員会は、これらのインタビューやリポートの内容、チラシや茶封筒などの“物証” について、TOKYO MXおよび制作会社から報告書と回答書の提出を受け、その内容を慎重に検討した。その結果、委員会としても独自に調査を行う必要があると判断した。調査のための聴き取りを行ったのは、① 高江地区への救急車の出動を管轄する国頭地区行政事務組合消防本部消防長、② 抗議活動が行われていた東村高江区の区長、③ チラシと茶封筒を持参したC氏、④ チラシを発行した人権団体の事務局関係者、⑤「いきなりデモ発見」の映像の最前列に映っていた抗議活動への参加者3人である。

 

2 基地建設反対派は救急車を止めたのか

基地建設反対派が救急車を止めたとのB氏の発言については、新聞社や他の放送局が国頭地区行政事務組合消防本部に取材したうえで、そのような事実はなかったと報道している。委員会も、念のため、同消防本部消防長に聴き取り調査を行った。

 

消防長の説明は、以下のとおりである。

  1. 2016年7月から12月までの間に、高江地区ヘリパッド建設現場付近からの通報は、20件あった。20件のいずれについても救急車の通行を妨害された事実はない。道が抗議活動やそれを規制する機動隊員等のため狭くなり、人を轢いてはいけないので徐行したことはある。
  2. 20件のうち防衛局職員、機動隊員を病院に搬送したケースが2件あったが、いずれも軽症。他の18件は抗議活動側が傷病者であった。
  3. 抗議活動側が傷病者であった18件のうち1件について、傷病者を収容した救急車が徐行運転を開始して間もない高江橋で、抗議活動側の人が救急車に対して手を挙げて合図し、救急車に停止してもらい、誰を搬送しているのかを確認したことがあった。救急車が停止した時間は数十秒であった。この事実が「救急車を止めた」と誤解された可能性がある。
  4. ヘリパッド建設現場付近以外の高江地区からの救急出動要請件数は、同期間中で計10件であり、ここでも救急車の通行を妨害された事実はない
  5. 高江地区への救急出動は、東村平良地区にある国頭地区行政事務組合消防本部東分遣所からと、国頭村辺土名地区にある消防本部からの2通りがある。救急車の稼働状況によって、どの救急車が出動するかが決まる。
  6. 東分遣所から高江に出動する場合は、県道70号を北上するルートとなる。消防本部から高江に出動する場合には、(a)国道58号を東シナ海沿いに南下し、大宜味村内を東村平良方面に抜け、平良から県道70号を北上する反時計回りのルートと、(b)国道58号を東シナ海沿いに北上し、国頭村北部森林地帯を東西に横断する道路を抜け、県道70号を南下する時計回りのルートとがある。
  7. 119番通報があってから救急車が高江の現場に到着するまでの時間は、出動要請があった際の救急車の所在場所によって異なるが、東分遣所からの出動の場合は概ね30分程度、消防本部からの出動の場合は、(a)(b)のいずれのルートでも40分から1時間程度はかかる。
  8. 制作会社側からの取材は、本件放送前にはなかった。

 

委員会は、消防長から、2016年7月から12月までの高江地区ヘリパッド建設現場付近からの通報20件について、事故種別、救急出動要請があった時刻、救急車が現地に到着した時刻、消防署に帰署した時刻、出動した救急車の所属(消防本部か東分遣所か)などの、個人情報を含まない客観情報が記載された一覧表の提供を受けた。

 

この一覧表によれば、防衛局職員と機動隊員が搬送されたケースが各1件ある。いずれも東分遣所所属の救急車の出動であり、救急車が現地到着までに要した時間は、それぞれの救急出動要請があった時刻と救急車の現地到着時刻との差から計算できるが、(ⅰ)防衛局職員を搬送したケースでは25分、(ⅱ)機動隊員を搬送したケースでは31分であった。他方、抗議活動側が傷病者であった場合、東分遣所所属の救急車が現地到着までに要した時間の平均値は、29.75分(全12件。最短で22分、最長で42分)であり、防衛局職員らのケースと大差がないことが分かった。抗議活動に参加する人々が、自分たちの仲間を搬送してもらうための救急車の通行を妨害することは考えられないから、抗議活動に参加する人が搬送されたケースの29.75分という平均時間は、東分遣所所属の救急車が通行妨害のない状況で高江の現場に到着するまでに通常要する時間を表しているといえる。従って、防衛局職員と機動隊員が搬送されたケースも含め救急車はすべて通常要する時間の範囲内で現場に到着したというべきであり、救急車が、抗議活動に参加する人々によって妨害された事実は確認できない。

 

また、東村高江区長も、委員会の聴き取りの際、抗議活動に参加する人々による通行車両の“規制”などの行き過ぎた行動には不満を感じていたが、高江地区から出動要請を受けた救急車の通行が抗議活動により妨害された事実はないと述べている。

 

従って、(依田啓示氏の)「防衛局、機動隊の人が暴力をふるわれているので、その救急車を止めて、現場に急行できない事態が、しばらく、ずーっと続いていたんです」という放送内容については、裏付けとなりうる事実の存在が認められない。

 

なお、TOKYO MXの報告書によれば、反対派が救急車を止めたという内容は、B氏だけではなくB氏以外の地元住民1名からの「反対派が県道一杯に駐車しており、自分の車を含め事実上通行ができなかったが、同じ車列の中に救急車がいた」という情報をもとに放送したという。

 

しかし、本件放送をみてもこの地元住民の存在は確認できない。さらにTOKYO MXは、反対派が救急車を止めた事実はないと認めつつ、「反対派が起こした渋滞により救急車が現場に着くのが大幅に遅れた可能性がある」と説明するのが適切だったとしている。しかしながら、現地の消防本部の資料などによれば、救急車の現場到着が大幅に遅れたケース自体が見当たらない。反対運動による渋滞の列に救急車がいたという情報が仮にあっても、それは反対派が実力で救急車を止めたという本件放送の伝えた事実とは趣旨をまったく異にしており、到底その裏付けにならないことは明らかである。

 

3 基地建設反対派は日当をもらっていたのか

本件放送の取材VTRは、基地建設反対派は「なぜ、あと先考えず犯罪行為を繰り返すのか?その裏には信じられないカラクリがあった」というナレーションのあと、人権団体のチラシと茶封筒のカラーコピーを用いたC氏 (手登根安則) のインタビューを続けることによって、反対派は抗議活動に対する手当としての「日当」をもらっているのではないかとの疑惑を伝えている。委員会は、茶封筒やチラシがそのような内容の裏付けとして用いられる合理的な根拠があったのかを検討するため、C氏に聴き取り調査を行った。

 

C氏によれば、茶封筒は、普天間基地野嵩ゲートのフェンスを清掃するボランティア活動をしていた際、捨てられていたゴミの中からボランティアスタッフが見つけたものだという。見つけたのは、2013年終わり頃から2015年初め頃だったと思うと説明した。本件放送で使った茶封筒のコピーはC氏自身が作成したもので、茶封筒の現物は保管してあるが、番組スタッフには現物を見せていないとのことであった。

 

「光広 2万」と書かれた茶封筒について、金額が書かれていたため、C氏の仲間が抗議活動に参加していた人たちに、手当をもらっているのかと聞いたところ、手当はもらっていない、交通費はもらっていると答えた女性がいたとのことであった。また、別の機会に茶封筒の中身をたずねた際は、パンフレットが入っているとの答えが返ってきたという。⇨ No Proof

 

C氏は委員会の聴き取りに対し、茶封筒の中身は交通費だと思っており、自分は反対派が手当をもらっていると言ったことはないと述べている。また、茶封筒に書かれていた「大城」は沖縄では一般的な名字なので、その記載から持ち主をわりだすことは不可能であり、「光広」「大城」が誰かを特定しようとはしていないと述べた。

 

日当の支払いの記載があるかのように紹介されたチラシは、C氏が人権団体のホームページからダウンロードしたものであるという。C氏は、インターネットで人権団体が沖縄に人を派遣するということを知り、問題だと思いチラシを入手したが、人権団体に直接問い合わせはしていないとのことである。

 

委員会は、人権団体の事務局関係者にも聴き取りを行った。

 

2016年9月9日から11月末にかけて、今回取り上げられたチラシに表示された「市民特派員」の派遣を企画した。「市民特派員」は、那覇から遠く離れ、メディアが継続的に取材活動をすることが困難な高江の現場の状況を、本土の人たちに対して情報発信し、議論を喚起することを目的としていた。このチラシなどで募集したところ、36人の応募があり、うち16人を採用した。「市民特派員」の年齢層は、20代から60代までと幅広いが、中心は30代から40代で、同年9月から12月下旬まで随時派遣した。抗議活動は水曜日と土曜日に統一行動があるので、少なくとも4日間は滞在して取材し情報発信してほしいと考え、不足分は自己負担とすることを前提に格安航空運賃(東京から往復3万円程度)と4日間の滞在費の一部という趣旨で5万円に決め、「往復の飛行機代相当、5万円を支援します」と記載したとの説明であった。資金は、「市民特派員」派遣のためにカンパを募ったという。

 

事務局関係者によれば、募集の趣旨どおり「市民特派員」全員が自分のツイッターフェイスブックのアカウントを使って高江の現地の様子を発信し、ツイキャスなどで現場中継を行った者もいた。報告記事も書いてもらい、人権団体のホームページには、うち10件が掲載されている。

 

以上の調査結果から明らかなとおり、少なくとも、C氏が本件放送で示した茶封筒のカラーコピーや人権団体のチラシは、基地建設反対派は誰かの出す日当をもらって運動しているという疑惑を裏付けるものとは言いがたい。たとえスーパーに疑問符をつけていても、そのような疑惑を裏付けなしに提起することが不適切であることに変わりはない。

 

4 「いきなりデモ発見」の場面

取材VTRの「いきなりデモ発見」の場面でA氏は、抗議活動に参加していた人々が「1人、2人と立ち上がって」「敵意をむき出しにしてきてかなり緊迫した感じになりますんで」と語るものの、その状況が映像に表れていない。委員会は、A氏 (井上和彦) が語るような危険な状況が本当にあったのかを確認すべく、この場面をつぶさに視聴した。その際、担当委員が、映像のテレビカメラ側に一番近い位置で抗議活動に参加していた人々の中に帽子を後ろ向きにかぶっている人がおり、その人が、沖縄の基地問題を扱った別の放送局の番組の出演者と同一人物なのではないかとの印象を抱いた。そこで、委員会から当人に連絡を取り確認したところ、映像に映っている本人に間違いないとのことであった。さらにこの人を通じて、同じくテレビカメラに一番近い位置で抗議活動に参加していた2人を特定した。

 

委員会は、この3人に対し、個別に聴き取りを行った。聴き取りをした人物と映像に映っていた人物が同一であることについては、本人の回答のほか、映像に映っていた際に着ていたジャンパー、帽子の提示を受けるなどの方法により確認した。

 

撮影当日12月3日の様子を質問すると、名護警察署に仲間が拘束されていることへの抗議のために集まっていたとのことである。3人とも抗議活動を批判するメディアが自分たちを撮影しに来たことがあったので、トラブルを避けるため仮に声をかけられてもむやみに応答しないことにしていたという。

 

その中の1人は、名護警察署から数十メートル離れた歩道橋の近くにテレビカメラを持った人を含む数名がいたことを記憶している。他の1人は、名護警察署裏の路上にワンボックスカーが駐車しており、車から人が出たり入ったりしていたという。3人とも一致して述べているのは、撮影スタッフは自分たちに近づいて来ていない、取材交渉には来ていない、A氏は沖縄では有名ではなく、自分たちもA氏のことを知らず、A氏が近づいてきたことに気づかなかったという点である。

 

これらの回答は、反対派から「おまえ誰や」「何しに来た」と罵声を浴びせられたとの制作会社の回答、取材VTRでA氏を「反対派にとって有名人」と伝えたスーパーとは、大きな隔たりがある。なお、本件放送に出演したC氏も、委員会の聴き取りに対し、A氏は沖縄の人にそこまでは知られていないと回答している。

 

制作会社側も抗議活動に参加していた人々に取材交渉をしていないと回答しており、取材VTRの中にも抗議活動に参加している人々が声を荒げる映像や音声は存在しない。

 

以上の調査結果からは、まず取材VTRでA氏を「反対派にとって有名人」と伝えたスーパーには裏付けがあったとは言いがたいことが指摘できる。さらに、反対派から「おまえ誰や」「何しに来た」と罵声を浴びせられたという制作会社の回答にも、取材目的・経緯からみて、あってしかるべき映像や音声の裏付けがない。従って、取材VTRでA氏が述べている「もう近づくとね、1人、2人と立ち上がって」「敵意をむき出しにしてきてかなり緊迫した感じになりますんで」という放送内容には、その裏付けとなるような客観的な事実が認められない。

 

Ⅴ 考査に対する検証

本件放送で「過激な反対運動」の実例とされている内容のうち、①基地建設反対派が救急車を止めたという内容には裏付けとなりうる事実が認められない。②名護警察署前でA氏が述べている「もう近づくとね、1人、2人と立ち上がって」「敵意をむき出しにしてきてかなり緊迫した感じになりますんで」という内容にも裏付けとなりうる事実が認められない。また、③本件放送で提示された茶封筒のカラーコピーやチラシは、基地建設反対派は誰かの出す日当をもらって運動しているという疑惑の裏付けとなるものとは言いがたい。これらの内容は、他のマスコミが報道しない「過激な反対運動」の実像を伝えるという本件放送の核となるべきものであるにもかかわらず、それらに十分な裏付けがないままに放送された点で、本件放送には放送倫理上の問題が含まれていた。

 

しかしながら、本件の検証でTOKYO MXに問われているのは、あくまでも、その考査が当時、適正に行われたといえるかどうかである。考査の適正さを判断するためには、考査という重要な仕事を担当する放送人であれば、視聴して疑問を抱き、意見をつけるなり、制作会社に問いただすなりすべき点や、そうすることが可能であったと考えられる点が、本件放送にあったのかどうかを検討しなければならない。この観点から検証した結果、委員会は、少なくとも以下の6点において、TOKYO M

Xの考査には問題があったと判断した。

 

1 抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった

本件放送を視聴する限り、番組制作者が“抗議活動に日当を出している疑いのある組織”として指摘する人権団体およびその共同代表に対して取材を行った形跡はまったく見受けられない。

 

加えて、取材VTRの冒頭の「いきなりデモ発見」のシーンでも、A氏は「反対運動の連中」「襲撃をしに来る」などと述べつつ抗議活動に参加している人々に近づいて行くものの、実際には参加者に取材することなく、カメラのある方向に引き返してきている。高江ヘリパッドの建設現場に至っては、現地に行くことさえしていない。

 

本件放送は、沖縄の米軍基地建設反対運動に参加する人々とその活動を「マスコミが報道しない真実」として批判的に報じるものである。このような意図で制作する以上、本件放送で批判されている抗議活動への参加者、および参加者に日当を出している疑いがあると指摘されている人権団体とその共同代表を取材するのが当然であろう。

少なくともその試みがなければならない。

 

民放連とNHKが定めた「放送倫理基本綱領」は、「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」としている。TOKYO MXが番組基準で準用する民放連放送基準も、「(32)ニュースは市民の知る権利へ奉仕するものであり、事実に基づいて報道し、公正でなければならない」「(34)取材・編集にあたっては、一方に偏るなど、視聴者に誤解を与えないように注意する」と定めている。

 

TOKYO MXの番組ジャンルでは、『ニュース女子』は「バラエティ・情報」番組に位置づけられている。だが、事実を取り扱う以上、報道番組と同じように上記の各規定に留意すべきである。委員会は、2011年に公表した決定(第13号)で、すでにこのことを指摘している。

 

考査担当者は、これらの規定に照らし、抗議活動を行う側に取材をしたかどうかについて、考査段階で疑問を持ち、少なくとも制作会社に確認したうえで、放送すべきか否かの判断を行うべきであった。抗議活動を行う側に対する取材映像や取材結果が存在しないことを看過した点において、TOKYO MXの考査は適正でなかったというほかない。

 

2 「救急車を止めた」との放送内容の裏付けを確認しなかった

本件放送が、抗議活動に参加する人々は反社会的な人々であるとする重要な根拠としているのは、地元住民のB氏による「防衛局、機動隊の人が暴力をふるわれているので、その救急車を止めて、現場に急行できない事態が、しばらく、ずーっと続いていたんです」とのインタビュー内容である。

 

現場に出動する救急車を実力で妨害する行為は、その態様により公務執行妨害罪、威力業務妨害罪にも該当しうる犯罪行為である。しかも人命にかかわる場合もありうるのである。このような事態が生じていると報じる場合、事実の存否について、まず消防や警察に事実確認を行うことは取材の基本であり、また容易にできることである。しかしながら、本件放送では、制作会社が消防や警察に対し、抗議活動に参加していた人々による救急車の通行妨害の事実の有無を確認した形跡はうかがえない。

 

救急車を実力で妨害する行為があったかどうかは、本件放送が取り上げた重要な事実であるだけに、考査担当者としては、制作会社に対し、消防や警察への取材の有無を確認し、また、B氏と同様のことを述べる住民が他にいないのかなど、その情報を補強する材料の有無を確かめるべきであった。

 

考査担当者は、委員会による聴き取りに対し、B氏の発言とインターネット上の情報による裏付けのみで十分と考えたと回答したが、インターネット上の情報には不正確なものも含まれていることを考慮すると、この重大な事実を放送するに足る十分な裏付けがあったとは言えない。

 

3 「日当」という表現の裏付けを確認しなかった

本件放送では、基地建設反対運動に参加する人々が抗議活動に対する手当としての「日当」をもらっているのではないかと表現する根拠として、人権団体のチラシと2枚の茶封筒のカラーコピーが用いられている。しかしながら、人権団体のチラシには「日当」との記載はなく、「特派員を派遣しよう!」「往復の飛行機代相当、5万円」と明記されていることは、本件放送の映像からも確認できる。

 

茶封筒のカラーコピーについても、米軍普天間基地の周辺で見つかったとのC氏による説明があるものの、それぞれ「光広 2万」、「大城様 3/22~28日まで」との記載があるのみである。このチラシと茶封筒だけでは、基地建設反対運動に参加する人々が「日当」をもらって運動しているのではないかと報じる十分な裏付けとならないことは明らかである。

 

なお、『ニュース女子』は2016年10月17日の放送でも、沖縄の米軍基地反対派の活動を取り上げていた。同放送回のスタジオトークでA氏は、人権団体から支払われる5万円について触れ、「実はこれ、ある運動が出ましてですね、取材いろいろやっている中で、5万円あげるから、5万円、要するに交通費、沖縄までの、これまあ特割かなんかで行けるんですけど、5万円あげるからおいでっていうことで、本土からもおいでくださいっていう呼びかけなんです」と言及し、5万円の趣旨を「交通費」と述べていた。

 

約2か月前の、しかも同じ沖縄の米軍基地に反対する抗議活動に焦点を当てた番組で、同じ出演者が「交通費」と述べていたことを前提とすれば、考査担当者は、本件放送における「日当」という表現について、その裏付けの有無を一層慎重に確認すべきであった。

 

4 「基地の外の」とのスーパーを放置した

本件放送では、取材VTRのスーパーで、「基地の外の」との形容が以下の4か所で

使用されている。いずれも「基地の外」の文字だけが黄色の斜体で強調されている。

・「基地の外の反対派によるフェンスへの抗議活動」

・「基地の外の反対運動の人達は土日休み」

・「きちんと月曜から出勤の基地の外の反対運動する活動家の皆さん」

・「基地の外の反対運動の活動家達が高江ヘリパッド移設反対デモに集中投入!?」

 

「基地の中の」反対運動が現実的には考えられない以上、反対運動に「基地の外の」との不要な形容を付し、「基地の外」だけを斜体と黄色い色で強調していることについては、それだけで特別の意図があるのではないかという疑問を持つべきである。なお、「基地の外」との表現は、ワープロソフトでキチガイが「基地外」と誤変換されたことから、その言い換えとして、主にインターネット上で用いられていることが確認できる。

 

スーパーは、映像の内容を視聴者にわかりやすく説明する効果があるが、それは同時に、映像や音声と相まって視聴者の脳裏に文字情報を焼き付け、強烈な印象を残す作用もある。

 

考査担当者は、制作会社に対して、「基地の外の」との形容を付し、「基地の外」だけを斜体と黄色い色で強調した理由について、少なくとも確認のうえ、納得のできる理由が示されなければ修正を要請すべきであった。

 

5 侮蔑的表現のチェックを怠った

取材VTRでは、抗議活動に参加する人々のことを冒頭からいきなり「反対派の連中」と呼んでいる。さらに、「基地の外の反対運動の人達は土日休み」、「週休2日」、「過激派デモの武闘派集団『シルバー部隊』」といった表現が用いられている。一連のVTRの流れの中でみたとき、これらの表現が抗議活動に参加する人々のことを揶揄する意味合いで用いられていることは明らかである。

 

民放連放送基準には、「(44)わかりやすく適正な言葉と文字を用いるように努める」「(48)不快な感じを与えるような下品、卑わいな表現は避ける」との規定がある。TOKYO MXの考査では、これらの規定に照らし、上記のような侮蔑的表現を指摘し、修正を求めるべきであった。

 

6 完パケでの考査を行わなかった

“持ち込み番組”では、放送局は番組の制作過程にほとんどかかわらない。それゆえに、慎重かつ厳格な考査が求められる。とりわけ、本件放送に関してTOKYO MXが完パケでの考査を行わなかったことは、大きな問題である。

 

本件放送では、スタジオ収録部分のスーパーは考査後につけられ、考査担当者はまったくチェックしていない。その結果、抗議活動に参加する人々が「日当」をもらっている疑いがあるとの取材VTRの内容を超えて、「反対運動の日当は誰が出している?」という「日当」が支払われていることを前提としたスーパーが、考査のチェックがなされないまま放送された。

 

放送する内容を視聴者に届く状態でチェックすることは、放送について責任を持つ者の最低限の義務であるが、本件放送では、それを怠った結果、スタジオ収録部分に、根拠のないスーパーが付加されて放送されたのである。

 

TOKYO MXの報告書は「当社は、放送局として、どのような形態の番組であっても放送法、放送基準に則った内容であることを確認し、然るべき対応をする義務がある」と認め、“持ち込み番組”の際の具体的な手続きに「原則として」「納品前の完パケの確認」を挙げている。本件放送ではこの「原則」から逸脱した理由を、CS放送開始当初より制作サイドにある「旬なネタを早く放送したい意向」を可能な限りかなえるため、としている。しかしながら、“持ち込み番組”においては、完パケの確認は放送責任を全うするための極めて重要な手続きであるから、持ち込む側のこの程度の意向は、その原則を崩す根拠となるものではない。

 

Ⅵ 委員会の判断~重大な放送倫理違反があった

以上のとおり、本件放送に対するTOKYO MXの考査は、以下の6点から放送倫理に照らして適正に行われたとは言えない。①抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった、②「救急車を止めた」との放送内容の裏付けを制作会社に確認しなかった、③「日当」という表現の裏付けの確認をしなかった、④「基地の外の」とのスーパーを放置した、⑤侮蔑的表現のチェックを怠った、⑥完パケでの考査を行わなかった。

 

本件放送には複数の放送倫理上の問題が含まれており、そのような番組を適正な考査を行うことなく放送した点において、TOKYO MXには重大な放送倫理違反があったと委員会は判断する。

 

TOKYO MXは、2017年2月27日付で、『番組「ニュース女子」に関する当社見解』を公表した。この中で同局は、「番組内で使用した映像・画像の出典根拠は明確でした」「番組内で伝えた事象は、番組スタッフによる取材、各新聞社等による記事等の合理的根拠に基づく説明であったと判断しております」「事実関係において捏造、虚偽があったとは認められず、放送法及び放送基準に沿った制作内容であったと判断しております」と主張している。

 

しかしながら、本件放送で使用された映像や画像の撮影者や撮影日時などの情報が視聴者にとって明確であったといえるであろうか。一例を挙げれば、番組開始から4分過ぎに「車道を横断し罵声を浴びせる活動家」というスーパーとともに流れる「バカヤロー」などと叫ぶ男性の映像(その顔はボカシをかける映像加工がされている)は、TOKYO MXの報告によれば、今回の取材の2年前の2014年9月に、本件放送にも出演したラジオDJのC氏が知り合いから提供を受けたものとのことである。この映像は、普天間基地ゲート前でのA氏の「普段ならばひどい状況になって」とのリポートに引き続いて用いられているので、視聴者は同じ時期の状況と思うのが自然である。

 

この映像を含め、本件放送で使用している映像・画像の中には、撮影日が数年前のものや引用先を明示していないものが複数ある。そのため、これらの映像や画像を見た視聴者は、放送当時の普天間基地や高江の「現在」を示すものと受け止めた可能性がある。TOKYO MXは、自社の見解を出すにあたって、それらの使用方法が不適切だと考えなかったのであろうか。

 

また、前記「Ⅳ 委員会の調査」で指摘したとおり、本件放送が伝えた内容には主要な部分について裏付けの存在が認められないか、裏付けが十分でないものが含まれていた。従って、「放送法及び放送基準に沿った制作内容であった」とのTOKYO MXの判断は誤っている。TOKYO MXが、本件放送の放送倫理上の問題を真摯に検証したとは言いがたい。

 

Ⅶ おわりに

考査には“砦”の役割があると委員会は考える。では、何を守る“砦”なのか。

 

ひとつは“放送の自主・自律を守る砦”である。BPO設立の経緯が示すとおり、放送局が他者からの規制を受けず表現の自由を確保するうえでの、基本にして最終的な方法は、放送倫理の遵守である。放送局は、番組を世に送り出す前に、放送倫理に適った番組であるかどうかを検討し、番組基準に合致しないと判断すれば、放送を踏みとどまらなければならない。その判断の要の役割を果たすのが、各放送局の考査である。つまり考査という砦は、放送内容に対する干渉を、未然に防いでいるといえる。

 

考査はまた、多メディア社会における“放送の矜恃を守る砦”でもある。民主主義社会は、表現の自由の保障のうえに成り立つものであり、名誉毀損やわいせつ表現など他者の人権を侵害したり犯罪となったりするものでない限り、どのような主張・論評をしようと自由だ。加えてインターネットが社会に浸透した現代では、いかなる個人・団体も不特定多数に向けて情報を発信できる。インターネットは、圧倒的な情報量と速度をもつメディアである。しかしその一方で、インターネット空間では、事実とは異なる情報や根拠のあいまいな情報も瞬時に拡散され、事実に基づかない論評と侮蔑的表現とが結びつき誹謗中傷へと堕していくこともある。これに対して、放送では、番組制作にあたり、取材による裏付けを欠かさないこと、節度ある表現を保つことなどが求められているうえ、放送倫理を守っているかどうかを放送局自身がチェックする仕組みもある。その仕組みの要といえる考査が機能しなければ、民主主義社会における放送の占める位置を脅かすことにつながる。

 

本件放送において、砦は崩れた。修復を急がなければならない。

 

TOKYO MXは、委員会に対する報告書の中で、本件放送内容は妥当であったと考えているものの、「違法行為を行う過激な活動家に焦点を当てるがあまり、適法に活動されている方々に関して誤解を生じさせる余地があったことは否めず、当社として遺憾と考えております。また、より多くの高江住民の声も聞くべきであったとも考えております。今後制作する番組内では、沖縄県民意識に配慮しつつ再取材を行った上で、より多角的に」沖縄米軍基地問題を取り扱っていくと報告した。

また、TOKYO MXの番組審議会は、同局に対して以下のような要請をした。

 

視聴者などから指摘を受けた問題点について、指摘を真摯に受け止め、現地での追加取材を行い、可能な限り多角的な視点で十分な再取材をした番組を制作し、遅くとも2017年上半期中に放送するように努めること。

 

持ち込み番組を含めた社内の考査体制について、更に検討を進めた体制を7月1日までに再構築するとともに、その一環として、「持ち込み番組に対する考査ガイドライン」を制定し、周知のうえ、実効性を確保すること。 * 「TOKYO MXは、放送を行うにあたって公平、公正な立場を堅持し、基本的人権を尊重する。言論・表現の自由を貫き、放送倫理の向上と品位の維持に努める」本件放送のように、他のメディアが取り上げない事実や情報を伝えようとする試みは重要である。しかし、そのようなときこそ、この前文がいうように「公平、公正な立場」が堅持されなければならない。「公平」である以上、一方の側の見解のみを伝え、反対側の見解を一切無視することは許されない。そして何よりも「公正」な内容の放送でなければならない。そのためには、伝える情報の正確さの追求、裏付けの徹底、偏見の排除といった、放送人が歳月をかけて培ってきた価値観が尊重されなければならない。それこそが「公平、公正な立場」に立った放送ではなかろうか。

 

ポスト・トゥルース」などということばがまかり通る時代にあって、放送が言論・表現の自由を貫くためには、放送倫理の根本に立ち返って、自らが発信する情報の質を常に検証することが必要となる。放送人には、放送倫理を守り、砦を強固なものにする不断の努力を求めたい。

 

最後に、TOKYO MXが掲げる番組基準の前文を引きたい。

 

番組審議会の要請を踏まえ、TOKYO MXは9月30日に報道特別番組『沖縄からのメッセージ~基地・ウチナンチュの想い~』を放送した。同番組では、基地問題の背景にある沖縄県の歴史をたどり、米軍基地建設に対する抗議活動にかかわる人たち、基地をやむを得ないものとして容認する人たちなどに取材していた。また、TOKYO MXは、考査体制の再構築の一環として、編成局に考査部を新設した。今後、本件放送に関して指摘した考査の問題点がどのように改善されるか、成果を見守りたい。

 

これはまだ始まりにしか過ぎぬ。

 

Tokyo MX の報道特別番組はなんの検証番組にもなっていなかった。そして謝罪も声明もまだ何もしていない。

 

それどころか悪質なヘイト番組を制作した DHC 側は、今もって偏向番組を制作したことを認めず、逆に「中傷に屈しない」などという態度だ。

 

www.asahi.com

 

そして実際に番組を作った制作会社ボーイズが作っている
同様の沖縄ヘイト番組「そこまで言って委員会」なども
あの恵隆之介などを平気でパネルに呼び、沖縄ヘイトデマを展開する番組を作っている。

 

uyouyomuseum.hatenadiary.jp

 

これからはヘイトやデマをお笑いとして誤魔化しながら
地上波で拡散してきた「そこまで言って委員会」も、同様に厳しく問うていくべきだ。