琉球朝日放送 報道制作部 ニュースQプラス » Qプラスリポート 女性暴行殺害事件から1年 遺族手記公表
うるま市で20歳の女性が元アメリカ兵の男に殺害された事件からきょうで1年です。きのう女性の遺族が手記を公表し、その、苦しい胸の内を語りました。
元アメリカ海兵隊員のケネス・シンザト被告は、去年4月うるま市で当時20歳の女性を乱暴目的で暴行し殺害した後その後遺体を遺棄した罪などに問われています。
被告の弁護人によりますと、ケネス被告は、殺人の罪については否認しています。また、ケネス被告は今後裁判員裁判で審理されますが、まだ裁判の期日は決まっていません。
事件から1年を前に女性の父親が出した手記からは、今なお癒えることのない苦しい胸の内が伝わってきます。
「娘を失ってから1年になりました。今でも、恩納村に献花に来てくださる県民、他県民の皆様、また遺族を支援してくださる皆様に心より感謝申し上げます。今も、娘を思いながら手を合わせ供養する毎日です。一年になるのですが、娘への思いは何も変わることはありません。今、私たちが娘に伝えたいことは、痛く苦しい思いをさせてしまったね、でも今は安らかに眠ってね。ということです」
今朝も遺棄現場には多くの人が訪れた。
男性「自分たちが想像する以上の気持ちではあると思います、1年間。たぶんこれからもですね、どんな気持ちかなというのは僕らが簡単に言えないですけどね」
男性「平和な沖縄にしたいなという気持ちで、「どうぞ見守ってください」と。絶対に真相解明しますからとそういう気持ちです」
現場には中嶋防衛局長も訪れた
「これから裁判があるのですが、私から被告人に言うことは何もありません。被告人が弁護人を通じて、新聞、ラジオ等で身勝手な発言をして報道されているのは知っています。私たち遺族は被告人を許すことはできません。いかなる言い訳も通用しないし、信用しません。被告人は人ではないのですから、私たち遺族は極刑を望みます」
一方、嘉手納基地周辺では追悼・抗議集会が行われた。
女性「悲しみと怒りですよね。若い人ですよね。自分たちの沖縄の若い命を守れなかった」
女性「何度も同じような事件が起きているいつになったこういう緊張感とか恐怖感から解放されるのかと思うと他人事ではない」
きょうの定例会見で翁長知事は「 (政治が女性を) 守ることができなった。大変申し訳ないと。その状況が今も何ら変わることなく続いていることを大変残念に思うしこういう事態を必ず打破するという決意を新たにしている」
「今なお米兵や軍属による事件事故が相次いでいます。それは沖縄に米軍基地があるゆえに起こることです。一日でも早い基地の撤去を望みます。それは多くの県民の願いでもあるのですから。一年間いろいろなことがありました。私たち遺族は皆様のあたたかさに救われています。娘を失った悲しみは消えませんが、これから先も娘を思い、供養していきます」
あの事件から1年と考えると様々なことを考えてしまう。私たち報道機関は半年や1年と勝手に区切りをつけ、ニュースとして伝えるがご遺族からすると、区切りなどなく毎日とてもつらい日々を過ごしている…
ケネス被告の裁判の日程はまだ決まっていない。
<社説>ケネス被告証言 被害女性に落ち度はない - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
2017年2月17日 06:01 琉球新報
<社説>ケネス被告証言 被害女性に落ち度はない
未来を断たれ無念のうちに亡くなった被害者だけでなく家族を何度傷つけるのか。
米軍属女性暴行殺人事件で殺人や強姦(ごうかん)致死などの罪で起訴されている元米海兵隊員で米軍属のケネス・フランクリン・シンザト(旧姓ガドソン)被告が犯行について「(事件が起きたあの場所に)あの時居合わせた彼女(被害女性)が悪かった」との認識を示していることが分かった。米軍準機関紙「星条旗」が被告の弁護人を通じて同被告の証言を報じた。
事件当日の日没は午後7時で、被害女性は同8時ごろウオーキングに出た。大通りがいつものコースだった。日暮れから1時間たつかたたずに、商業施設に程近い通りを歩くだけで見も知らぬ男に襲われ殺された。悪いのは加害者で、被害者に落ち度は全くない。
ケネス被告は日本の法制度では女性暴行は親告罪で、被害者による通報率も低いとして「逮捕されることについて全く心配なかった」と述べている。日米地位協定で守られているとの意識もあったのではないか。
被告側は強姦致死と死体遺棄の罪については起訴事実を認める一方で、殺人罪については殺意がなかったとして否認している。逮捕前の県警の調べに対して殺害をほのめかす供述をしていたが、逮捕直後から黙秘に転じた。被告は犯行の全てを法廷で明らかにし、罪を認め被害者に謝罪すべきだ。
証言によると、被告は「高校時代から女性を連れ去り乱暴したいとの願望があった」という。そして「人殺しがしたい」という動機で海兵隊に入隊した。
専門家は、海兵隊では男性的な攻撃性を突出するために、徹底的に女性を蔑視する非人間的な訓練が行われると指摘する。除隊後、効果的な殺人者となる非公式な教育を受けた被告が「欲望を満たす」ために女性に襲い掛かった。
県警によると米軍構成員(軍人、軍属、家族)による強姦は1972年5月15日から2016年末までの間に130件発生している。
ケネス被告の供述は同じ痛みを味わった女性たちをも傷つけた。退役米軍人でつくる「ベテランズ・フォー・ピース(VFP)」は海兵隊教育が今回の犯罪を生み出したと結論付けている。軍隊教育で犯罪の再発を防げないとなると、海兵隊の撤退こそ一番の再発防止策だ。