2人の父親
2016年7月16日
明後日の18日には、21歳の誕生日を祝うはずだったろうに。21年前に生まれてきた日を思い出し、月日の経つのは早いものだ…と、目を細めながら娘の笑顔を見たかっただろうに。
父親の娘は、米軍属の男に拉致され、強姦され、首を絞められ、ナイフのようなもので刺され、米軍の演習場近くの森林に捨てられた。父親が代理人を通じて発表した文書には、「被告には極刑を望み、娘が受けた痛み、苦しみ、恐怖を必ず受けてもらいたいと思います。」とある。当然だ。
一方で、今年3月、沖縄を訪れた観光客の女性が宿泊するホテル内で現役の米兵に強姦された。その裁判で被告が言い渡された刑は、2年6ヶ月。検察が求刑した4年という刑でも全く足りないが、それを大幅に下回る「実刑2年6ヶ月」。女性が経験した恐怖、悔しさ、悲しさ、心と身体の痛みは、2年6ヶ月で癒されるものか?
事件後に女性は、「泥酔していた被害者が悪い」だの、「ハニートラップだろう」などとネット上でセカンドレイプされた。彼女が受けた心の傷は、私たちの想像を絶する。裁判長は「被告が被害者が抵抗できない状態にしたわけではない」とし、あたかも被害者の女性に落ち度があったかのように述べている。女性は、この国にもレイプされたのだ。
裁判長は「被告の父が更生を支える方針を示している」ことも含め量刑を判断したようだ。被告の父親は、米国に住む米国人である。日本の司法は、その責務を放棄し、米国に住む一般の米国人に被告の更生を委ねるというのか?
娘を失った日本人の父親。女性を襲った息子の更生を任された米国人の父親。二つの事件。
これが、沖縄の現状。
(写真: 2016年7月16日 琉球新報 31面より)